グローバルテック企業に学ぶ、Go-To-Market領域でのAI活用の最前線
はじめに
あなたの会社のマーケティングや営業部門では、AIをどのように活用して売上向上につなげているでしょうか?
私は、米国発のGo-To-Marketチーム向けGTMインフラプラットフォームを提供するClayで働いています。
Clayは、Anthropic、OpenAI、Ramp、Lovableなど、急成長中のAI企業をはじめとしたグローバルテック企業のマーケティング担当者、Ops担当者、営業チームなどに、GTMの基盤として活用されています。
この記事では、グローバルテック企業がGTM(Go-to-Market)領域でどのようにAIを活用し、売上成長につなげているのかを解説します。急成長企業の裏側にある「AIドリブンなGTM」の考え方や実践手法と、それを支えるGTMインフラツールである「Clay」について紹介します。
用語説明
- GTMチーム:顧客に自社の製品・サービスを届け、売上に貢献するチームを指します。マーケティング、営業、カスタマーサクセスなどが代表例です。
- GTMツール:GTMチームが日々利用するツール全般を指します。広告配信ツール、メール配信のMAツール、営業のCRM、Gongなどの商談記録ツール、SlackやNotionといったドキュメント・コミュニケーションツールなどが含まれます。
では、AIをGTM領域でどのように活用すれば、実際の売上成果につながるのでしょうか。
AIドリブンなGTMを紐解く
GTMのどの領域でAIを使えば成果が出るのか。それを考えるために、まずGTMのプロセスを大まかに整理してみます。
GTMチームは売上成長を追求するために、リード獲得数、商談数、リードタイム、受注金額などを重要な成果指標として捉えます。
この中でも、特にテコ入れによるインパクトが大きいのは、リード獲得数と商談数の増加です。リードタイムは業務フローの自動化等で改善できますが、改善できる変数の幅も少なく、成果の劇的な改善にはつながりません。また、受注金額は製品のプライシングや契約体系に依存する部分が大きく、商談の中でクロスセルやアップセルを増やす余地はあるものの、短期的に大きく変えられる変数ではありません。
そして、マーケのリード獲得と営業の商談化は、以下の3つのステップが含まれます。
- ① ターゲティング:どの企業・どの担当者にアプローチをすべきなのか
- ② アプローチ仮説の作成:その企業や担当者は、どのような課題を抱えていて、自社のどの解決策が適しているのか。どのチャネルで、どのようなメッセージを届けるべきなのか。
- ③ 仮説の実行(アクション):メール送信、電話、SNSでの接触、ミーティング設定、営業担当者への通知など、実際のコミュニケーションの実行
この3つのステップの中で、AIが積極的に活用されているのはどの工程でしょうか?おそらく③アクションの工程の効率化が多いのかと思います。GTMツールに内蔵されたAI機能によるCRM入力の自動化、メールの下書きの自動作成、議事録の要約などが典型です。
これらは作業負担を減らし、追加施策に使える時間を生み出すという点で確かに有益です。しかし、③をどれだけ最適化しても、①ターゲティングと②アプローチ仮説が疎かであれば、売上へのインパクトは限定的です。
もしAIが自社のリードや、まだ接点のない潜在リードの中から、最も顧客になりやすく、かつ契約金額規模の大きい企業・担当者を見つけ出し、そして、その対象に対して最適な営業シナリオを設計することができれば、リード獲得数や商談数のインパクトは大きく跳ね上がります。
①ターゲティングと②アプローチ仮説にAIを活用するイメージは以下になります。
- 顧客の法人属性から自社の理想の顧客を特定
- 商談機会が発生しやすいシグナルを見つける
- CRM内に眠っている休眠リードの購買シグナルを検知する。
- 企業ごとに最適な営業チャネルを判断する。
- メール、電話、SNS、営業担当者へのSlack通知など、最適なアクションをシステムが自動実行する。
- あるいは、営業担当者が次のアクションを取るためのリサーチをAIが代行する。
このように、GTMの上流工程であるターゲティングとアプローチ仮説にAIを活用することが、今後のGTMにおける大きな競争優位になります。
しかし、AIをGTMに活用するには、大きな課題があります。
AIをGTMに活用する上での課題:データ基盤とコンテキストの設計
GTMでAIを活用する際に最も大きな壁になるのは、次の2つです。
1つ目は、AIのための顧客データ基盤が整っていないこと。 2つ目は、自社のGTMコンテキストをAIに実装できる基盤がないことです。

AIが参照するリードデータの母数が少なかったり、リードの属性データが不足していたりすると、AIが推論するための材料が足りず、良い結果にはつながりません。
また、AIを通じて、自社にとって最適な顧客を見つけ、最適なアプローチを設計するためには、AIが自社のGTMの現状、営業プロセス、アカウント攻略仮説、顧客ペルソナなどを理解している必要があります。
わかりやすい例として、ChatGPTに「自社サービスにとって最適な顧客を見つけて、どのようにアプローチすればよいか教えてください」と自社のコンテキストを含まない、一般的なチャット形式で利用した場合に、ChatGPTは、ウェブ上の自社のデータと汎用的なマーケ・営業施策を参考にします。
社内の事業コンテキストが十分に含まれていないので、そのまま実務に活用しようとするとズレることがあります。
同様の課題は、程度の差はあれど、CRMに内蔵されたAIや、CRMをMCPサーバーに接続してAIに尋ねる場合にも起こります。それらのAIはとても優秀で、便利ですが、ソースとなるデータが豊富でないとAIが出力できる内容も限定されます。例えば、CRM内のコンタクトにメールアドレスしかない、会社名しかないなどであれば、そのコンタクトを分析するのは難しいでしょう。
限られた情報の中でLLMが大まかにデータを処理して出したアウトプットは、一見使えそうに見えても、実際に運用しようとすると精度の粗さが目立ちます。結果として、人が再度確認し、判断しなおすといったことになりかねません。
また、自社が定義する顧客ペルソナ、セグメント、提案仮説などのコンテキストをもとに、複数ステップでAIの出力を分けながらターゲットリストを絞り込んでいく作業も、一般的なAIチャットやMCP連携だけでは完結せず、CodexやClaudeCodeなどを通じて、AIワークフローを別途構築する必要がありますが、ここでも、エンジニアリングの工数がかかるといった課題に直面します。
つまり、GTMでAIを最大限活用して成果を出すためには、以下の2つが重要になってきます。
① AIレディな顧客データ ②自社のGTMコンテキストをきめ細かく実装できるAIワークフロー
そして、これらを社内でゼロから構築しようとすると、実装に必要なツールの調達、システム構築、エンジニアリング、社内調整、運用設計など、非常に大きなコストが発生します。
AIドリブンなGTMの設計に必要な4つの要素
AIレディな顧客データ基盤を作り、自社のGTMコンテキストをAIに実装し、さらにAI施策のPDCAサイクルを高速に回すための要素は以下の4つになります。
- 複数のデータソースを統合し、データをクリーンな状態に保つETLシステム
- AIレディなデータを作るためのデータエンリッチメントツール
- データに対してAI処理を実行するためのAI実行基盤
- AIのアウトプットを各種GTMツールに出力できるワークフローツール
CRMだけでなく、外部の法人データベース、自社が保有する基幹システム、データウェアハウス(DWH)などのデータも統合できれば、AIが読み取れるコンテキストは大きく増えます。その結果、自社にとってより有望な顧客を見つけやすくなります。
そのためには、単にデータを集めるだけでは不十分です。重複した企業やリードのデータを削除し、項目ごとにデータを整理し、AIが処理しやすい形にクレンジングする必要があります。
さらに、会社の属性情報、担当者情報、自社にとって重要なニュースやイベントシグナルなどをエンリッチメントすることで、AIが営業担当者のように判断するための材料が整います。
そのうえで、収集・整理したデータに対してAI処理を実験的に実行できる基盤が必要になります。
AIの出力結果は、最初から完璧ではありません。何度かPDCAサイクルを回し、プロンプトや参照データをチューニングすることで精度が上がっていきます。
そのため、最初の粗いAI出力をそのままCRMやDWHに直接書き込むのは、運用上のリスクがあります。AIの結果を検証し、必要に応じて人が確認し、改善しながら運用に乗せていく仕組みが必要です。
また、AI処理についても、自社が契約しているOpenAI、Anthropic、Geminiなどのモデルを、用途に応じて使い分けられるとより効果的です。
インプットデータやプロンプトの内容に応じて適切なモデルを選択することで、より質の高いアウトプットが期待できます。
最後に、AIの出力結果を現場のGTMチームに届けるワークフローも必要です。
たとえば、CRMにデータを書き込む、営業担当者にSlackで通知する、リード向けにメールを送信する、といったアクションです。
AI時代にGTM領域で成果を出すためには、これらの設計をGTMチーム主導で迅速に構築し、AIの出力結果を現場に実装し、その結果を検証しながら改善サイクルを早く回すことが重要になります。
AI時代のGTMインフラツール「Clay」
ここまで説明したすべての仕組みを、個別のツールを調達してつなぎ合わせ、自社で内製するには大きな実装コストがかかります。
たとえば、FivetranのようなETLツールでデータを統合し、リバースETLツールやZapierのようなワークフローツールでデータ処理を行い、複数のデータプロバイダーと契約し、APIやCRM同期を通じてデータを接続し、最終的にn8nなどのツールを使ってAI処理を実行する。
このような構成を作る場合、多くの工程でGTMチームはエンジニアリングチームと連携する必要があります。社内調整、仕様策定、実装、運用保守にも大きなコストがかかります。
さらに、GTM施策の結果を見直し、改善するたびに同じようなコストが発生します。
AI時代のGTMでは、GTMチームがAI実装と効果検証のPDCAサイクルをどれだけ早く回せるかが重要です。しかし、それを実現するには、本来であれば潤沢なリソースとコストが必要になります。
この課題を解決するのが、GTMインフラツール「Clay」です。
Clayは、AIドリブンなGTMインフラとして、データ、AI、ワークフローの3つのレイヤーでGTMチームのデータオーケストレーションを実現します。
1. GTMデータ基盤レイヤー
CRM、DWH、Webhookなどのファーストパーティデータを統合するデータベースとして機能します。
また、100以上のプロバイダー経由でサードパーティデータのエンリッチメントを実行できます。標準のデータクリーニング機能により、名寄せ、重複排除、書式統一なども行えます。
2. AIアクションレイヤー
自社が契約しているOpenAI、Anthropic、Geminiなどのモデルを活用し、AIアクションを実行できます。
処理範囲を細かく制御でき、タスクの内容に応じてAIモデルをカスタム設定できます。また、外部ツールや自社のカスタムMCPサーバーと連携し、AIエージェントのアクションを実行することも可能です。
3. GTMワークフローレイヤー
GTMチームが利用する各種ツールに対して、Clay上からアクションを実行できます。
APIキーはClay側でセキュアに管理でき、カスタムのHTTP APIリクエストを送信することも可能です。
これらのアクションを1つのプラットフォーム内で実行できるため、GTM担当者はコーディングを必要とせず、GTMプロセスの上流工程にAIを実装できます。
つまり、自社にとって最適な顧客を見つけ、購買を前進させる最適なアプローチを設計し、その実行までを一気通貫で行うことができます。
ClayのGTMデータ基盤レイヤーでは、自社のファーストパーティデータ、サードパーティプロバイダー経由の外部データ、Web上のデータなどを、ノーコードで取得・統合できます。
Clayでは、データのインポート、参照、書式変更、エンリッチメントを行うことで、AIレディなデータを作成できます。
データのインポート元としては、CRM、データウェアハウス、スプレッドシート、CSV、HTTP、Webhookなどを選択できます。これにより、自社内のさまざまな場所に保管されている顧客データを、1つの場所に集約できます。
集約した顧客データに対しては、Lookupによる参照や、外部のサードパーティデータベース、Webリサーチツールを使ったエンリッチメントを行えます。
Clayは日本の法人データベースもサポートしており、ネットビジネスサポート社の法人データを付与することも可能です。
たとえば、SaaS企業のGTM担当者がSalesforceのコンタクトを分析する場合を考えてみます。
まず、CRMのコンタクトデータをインポートする。 次に、MAツールであるHubSpotのアクティビティログを参照する。 さらに、データウェアハウス内のユーザー行動ログを参照する。 コンタクトが所属している会社情報をCRMから参照し、NBSのデータで法人属性を付与する。 最後に、直近のWebニュースをAIでエンリッチメントする。
これにより、そのユーザーが自社にとって最適なターゲットオーディエンスかどうかを判断するための、多面的なコンテキストをClayのテーブル上に揃えることができます。
AI時代のGTMでは、社内外のデータにどれだけ早くアクセスできるかが競争力になります。
GTMチームが必要なデータをすぐに収集し、目的に応じて自由に変換できること。それが、AIを活かすための強固なGTMデータ基盤につながります。
Clay:AIアクションレイヤー
Clayでは、収集・整備したデータに対して、AIアクションを実行できます。
ClayのAIは、単にデータに対してLLMを実行するだけではありません。
GTMチームが持つ社内ノウハウ、営業プロセス、独自のペルソナ定義、アカウント攻略仮説といったコンテキストをAIに伝え、細かくデータを制御しながら、目的に特化したAIアクションを実行できます。
具体的には、GTMチームがAIを業務に実装しやすいように、ClayのAIは以下の設定が可能です。
- レコード単位でAI処理を実行できる
- テーブル上の他の列を参照し、条件分岐を設定できる
- JSONで出力されたデータに対して、参照範囲を細かく指定できる
- タスクの種別ごとに、AIモデルやプロンプトをカスタム定義できる
- OpenAI、Anthropic、Geminiなどの最新モデルに対応している
- Clay内のクレジットではなく、自社のAIアカウント契約を利用できる
- 自然言語で指示したプロンプトを、より適切なプロンプトに自動改善できる
- 既存データへのAI処理と、Webデータのリサーチに特化したAI活用の両方に対応できる
- 出力したいデータを複数のプロンプトに分割し、複数ステップのAIをアクションをワークフローで自動実行できる
- 自社の事業内容やGTM資料をPDFコンテキスト、またはMCPサーバー連携を通じて参照できる
これにより、自社ビジネスに特化した優秀なマーケティング担当者や営業担当者の判断を、AIが代替・補完できるようになります。
たとえば、データプロバイダーから提供された法人情報や企業Webサイトの情報を参照し、自社が定義するカスタムペルソナやセグメントに分類する。そして、それぞれのペルソナやセグメントに対して、最適なネクスト営業アクションをAIが判断する。
AIが高水準でターゲットリードを判定し、営業シナリオ仮説を設計できれば、営業チーム全体の行動の質のばらつきを抑えることができます。
また、ClayのAIアクションは、以下の2つの特徴により、AIコストやトークン使用量を最適化しやすくなります。
- 処理対象となるデータの範囲を細かく指定できるため、すべてのデータに対してAIを実行するのではなく、条件に合う必要なレコードに対してのみ処理を実行
- 自社契約のAIアカウントを使い、タスクごとにモデルを制御できる
AIが良い結果を出すために重要なのは、単に高性能なモデルを使うことではありません。どのようなコンテキストをAIに与えるのか、そしてそのコンテキストをどのように構造化して提供するのかが重要になります。この観点で、Clayでは、AIが読み取るべきコンテキスト、指示、モデル、参照データをUI上で制御できます。
AI時代にGTMで成果を出すためには、GTMチームが自社の事業コンテキストをどこまでAIに教えられるか。そして、その結果をもとにどれだけ早くPDCAサイクルを回せるかが重要になります。
今後は、自社のGTM定義に沿ったAIワークフローをカスタムで実装するだけでなく、自社で開発したMCPサーバーに対して、AIエージェントがアクションを実行するような世界が進んでいくでしょう。
そのとき、GTMチームがコストや工数の負荷を抑えながら、AIエージェントをワークフローの中に組み込めるプラットフォームの重要性はさらに高まっていきます。
Clay:GTMワークフローレイヤー
AIが出力した結果をGTMのアクションに落とし込み、その結果をフィードバックサイクルに回して改善していくことが、最終的な成果につながります。
GTMアクションの出口としては、営業担当者が日々使うSlackやTeamsなどのコミュニケーションツール、HubSpotやSalesforceなどのCRM、GoogleドキュメントやNotionなどの文書管理ツールが挙げられます。
しかし、AIの結果を条件に応じて迅速に届けようとすると、ワークフロー自動化の設計が必要になります。
Clayは、これらのツールとネイティブに連携しています。そのため、Clayで出力したJSONデータをそのまま参照し、Slack、HubSpot、Googleなどに出力できます。
APIキーの管理や、ツール間を行き来するスイッチングコストを減らせる点も大きなメリットです。
また、各ツール内で実行できるアクションの種類も豊富です。
CRMではデータ更新やタスク作成ができます。 Slackでは通知だけでなく、通知メッセージに対するSlackユーザーからのレスポンスを取得することもできます。
これにより、たとえば以下のようなフローを構築できます。
ClayのAIがリード情報を分析する。 営業担当者にSlackで通知する。 営業担当者が内容を確認し、フィードバックする。 そのフィードバックをもとに、Clay内でAIが再度内容を改善する。 承認された内容だけをCRMに書き込む、あるいは顧客向けメッセージとして利用する。
このように、人によるチェックフローを組み込むことで、正確性が求められるAI処理も実運用に乗せやすくなります。
また、自社で内製しているアプリや、Clay側でネイティブ連携がないアプリについても、ClayはHTTP APIの処理をノーコードで実行できます。
AIを活用したGTM施策は、アイデア次第でさまざまなことが可能です。一方で、まだ型化された成功プレイブックが少ないため、成功パターンに落とし込むまでには、実装と改善を繰り返す必要があります。
AIの出力結果をワークフローで自動化し、その結果を評価し、フローを修正していく。
この一連のプロセスを、最小限の人数で素早く実行できるのが、ClayのGTMワークフローレイヤーです。
組織でAIを活用する上でのポイント
AIを組織で導入する上では、データやツールに対するガバナンスも重要です。
誰がどのデータにアクセスできるのか。 どのツールを操作できるのか。 ユーザーごとに閲覧・編集権限をどう管理するのか。 プロジェクトごとの予算をどう制御するのか。 AI使用量をどのように可視化するのか。
Clayでは、ユーザーごとの権限管理、プロジェクト単位でのクレジット予算制限、チーム全体で共有されるワークフローの稼働状況や成果の可視化が可能です。
そのため、GTMチームがAIを積極的に活用しながらも、組織として安心して運用できる環境を整えることができます。
トップテック企業におけるAIドリブンなGTMの実践事例
AIベースのGTMとは、従来のようにインバウンドマーケティングやセミナーで大量のリードを集め、そのリードに対して一斉にマーケティングコミュニケーションを行うことではありません。
また、簡易的なファーストパーティシグナルをもとに、自動のナーチャリングメールを送るだけでもありません。
CRM、外部リスト、法人データベース、Web上の情報など、社内外のデータを組み合わせ、購買検討シグナル、会社属性、事業内容、採用情報、プロダクト利用状況などをAIが深くリサーチする。
そのうえで、自社にとって最も確度の高いリードを発見し、リードごとに最適なコミュニケーションチャネルを判断し、最適なプランやユースケースをパーソナライズして提案する。
これが、AIドリブンなGTMの本質です。
AIによって企業リサーチの質が大きく向上すると、インバウンドリードが初回コンバージョンしてから、BDRが質の高い初回接触を行うまでのスピードが上がります。
また、アウトバウンドで営業リーチを行う際のリスト精度や商談化率も向上します。
AIをフル活用している企業の営業担当者は、アカウントリサーチやリード判定にかける時間を減らし、バイヤーの意思決定を後押しする商談や提案に、より多くの時間を使えるようになっています。
ここからは、Clayを活用してAIドリブンなGTMを実践している企業事例を紹介します。
Anthropic:54%のエンタープライズロゴをAIセルフサービスで獲得
Anthropicは、市場の需要が急速に拡大したことで、プロダクトのサインアップやフォーム問い合わせなど、日々大量のインバウンドリードが流入する状況にありました。
一方で、すべてのリードに営業担当者が対応できるほどのリソースはありませんでした。
そこでClayを活用し、インバウンドで流入してきた企業について、従業員数、事業内容、資金調達実績などをリアルタイムにリサーチ。自社にとって最適なセグメントを判定し、セルフサービスのAIタッチに進めるべきか、営業担当者に引き継ぐべきかを判断する仕組みを構築しました。
Clayが社内外のリソースを調べ、リッチなコンテキストデータをもとにセルフサービスに進むべきかを判定する。その後、下流のAIエージェントが購入手続きを自動化する。
これにより、エンタープライズ顧客の獲得をAIがクロージングまで支援するPLGモデルを実現しました。
Pendo:新製品売上の55%以上をClay経由の営業リストから獲得
Pendoは、ソフトウェア企業向けにプロダクト利用状況の分析、ユーザーフィードバックの収集、プロダクト内ガイドなどを提供している企業です。
Pendoは、AIエージェントを内製している企業向けの新製品をローンチする際、自社CRM内のリードリストから、最も適合度の高いターゲットアカウントを見つける必要がありました。
そこで、ClayのWebリサーチツールであるClaygentを活用し、CRM内の約13,000社に対して、求人情報、プレスリリース、投資家向けIR資料などを分析しました。
そのうえで、最も適合度の高いターゲットアカウントをランク付けしました。
さらに、AIネイティブ、AIフォワードといった独自のペルソナ定義に基づき、企業を分類。その企業がどのようなAIエージェントを開発しているのか、自社の新製品がどこで価値を発揮できるのかを整理し、BDRに提供しました。
これにより、BDRはペルソナごとに最適な営業シナリオでアプローチできるようになりました。
結果として、全体の商談の3分の2、売上の55%以上がClayのターゲットリスト経由で創出されました。
AIが最適な顧客を見つけ、最適なアプローチを設計する好事例です。
Figma:営業担当者が本当に活用できる営業シグナルを構築
Figmaは長年Salesforceを利用していましたが、データベースが十分に更新されておらず、顧客データ基盤が古い状態のままになっていました。
その結果、リードの割り当て、営業アプローチ、スコアリングなど、GTM上のさまざまなプレイを実行しづらい状況がありました。
たとえば、過去にフォーム経由で作成されたコンタクトデータが何年も更新されておらず、多くの担当者がすでにその企業に勤めていないことも判明しました。
FigmaはClayを活用し、担当者のLinkedIn情報などを参考にしながら、不揃いでバラバラだったリードデータを更新・クリーンアップしました。これにより、AIレディな顧客データ基盤を整備しました。
また、Figmaには、無料サインアップ経由で入ってきたアカウントの利用者数や、特定機能の活用状況といったプロダクト利用データがSnowflakeに蓄積されていました。
しかし、それらの情報はSalesforce上では雑多な形で登録されており、営業担当者が使いこなせる状態ではありませんでした。
そこでFigmaは、自社CRMのデータ、Snowflake上のプロダクト利用データ、Webサイトなどの外部情報をClayに集約。複数のシグナルを組み合わせ、営業担当者がフォローすべき会社を抽出しました。
さらに、営業メッセージやネクストアクションをAIで作成し、本当に必要なデータだけをSalesforceに登録しました。
その結果、営業担当者は膨大で整理されていないデータから解放され、本当に活用できる営業シグナルをもとに営業活動を行えるようになりました。
Lovable:急増するインバウンドリードをAIでリサーチ・振り分け・支援
Lovableは、自然言語のプロンプトだけでフルスタックWebアプリを構築できるAIアプリ開発プラットフォームです。
LovableもAnthropicと同様に、個人、スタートアップ、大企業など、あらゆる層から無料利用や問い合わせが急増していました。
一方で、営業担当者のリソースだけでは、すべてのリードを十分に捌ききれない状況がありました。
そこでLovableはClayを活用し、AIがリアルタイムでリードの業界、担当者の役職、過去の接点、優先課題を見極める仕組みを構築しました。
その情報をもとに、最適な営業担当者を割り当て、商談前のアカウントリサーチメモを提供しました。
これにより、営業担当者はリードが利用しているツール、課題の仮説、自社との適合ポイントを把握した上でミーティングに臨めるようになりました。
また、LovableのAI Ops担当者は、インバウンドリードのリサーチ、自動振り分け、パーソナライズされた営業支援にとどまらず、AIと整備されたGTMデータを活用してさまざまなGTM仮説を実験しました。
たとえば、新しい市場におけるAIアプリ開発者のクリエイターパートナーを見つけるために、動画コンテンツの再生数や視聴者属性を分析し、スコアリングを行いました。
また、Clayを採用活動のリサーチエージェントとして活用し、優秀な人材のソーシングにも利用しました。
AIドリブンなGTMを実現する上では、GTM仮説を素早く検証し、PDCAサイクルを高速に回すことが競争優位の源泉になります。
Clayは、GTMのインフラ基盤として、従来であれば何日もかかっていたようなGTM施策のアイデアを、データ、AI、ワークフローのワンソリューションを通じて数時間で実装できるようにします。
これにより、GTMチームはAIドリブンな施策を継続的に試し、成果につながる施策を素早く見極めることができます。
まとめ
AIをGTMに活用する価値は、単なる業務効率化にとどまりません。
CRM入力の自動化、メール作成、議事録要約といったアクション領域の効率化も重要です。しかし、それだけでは売上へのインパクトは限定的です。
本当に成果につながるAI活用は、GTMの上流工程にあります。
つまり、自社にとって最も有望な顧客を見つけること。 その顧客が抱える課題や購買シグナルを捉えること。 最適なアプローチ仮説を設計すること。 そして、その仮説をワークフローに落とし込み、現場で実行し、結果をもとに改善し続けることです。
そのためには、AIレディな顧客データ基盤、自社のGTMコンテキストをAIに実装する仕組み、AIの出力結果を現場のGTMツールに届けるワークフローが必要になります。
Clayは、データ、AI、ワークフローを1つのプラットフォーム上でつなぎ、GTMチームが自らAIドリブンな施策を設計・実行・改善できるインフラを提供します。
AI時代のGTMにおいて、競争優位を生むのは、単にAIツールを導入することではありません。
自社の顧客データとGTMコンテキストをAIにどう渡し、どれだけ早く仮説検証を回せるか。
そのスピードと実装力こそが、これからのGTMチームの成果を大きく左右していくはずです。


